藤吉陽子 メイン

育児とフリーランスのお仕事で多忙な藤吉さん。最近は、長女・実々子さんと一緒に過ごす時間もなかなか取れない様子。そこで、これまで撮り溜めて眠っていた写真をアルバムにすべく一念発起。かけがえのない親子の時間を写し出したドキュメンタリーは、なにを物語るのでしょうか。

 取材・文:BAGN Inc 撮影:藤堂正寛 

ーお子さんの成長とともに、写真を撮る機会が減るご家族が多いそうです。藤吉さんはいかがですか?

同じく随分減りましたね。長女が小学校に入学してからというもの、まず一緒に過ごす時間が少なくなりました。一緒にいる時間といえば、朝のちょっとした時間と、暗くなって帰ってきてからの時間。普段の生活に追われてしまって、陽が出ている時間帯に元気な姿を撮るということがなくなってしまいました。

 

藤吉陽子

育児と仕事を両立しながらですからね。

私の仕事柄、現場に行かないと出来ない業務ですし。小学校の始業時間が、次女が通う幼稚園と比べて1時間以上早く、朝は支度に追われて終わってしまいます。そうしているうちに、妹が起きてきてカオスになるんですよ。学校が終わると、近くの公園で遅くまで遊んでから帰宅。友達と一緒に遊ぶ方が楽しいですし。一緒にいる時間が減り、互いの生活サイクルも変化したということですね。

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撮り溜めた写真をプリントしてみて、感じたことはありますか?

表情の豊かさは、幼い頃から変わっていませんね。一方で、妹が生まれてからの成長を改めて感じました。彼女が生まれる前は、屋上に枕を持っていって寝るみたいな、ひょうきんなことばかりやっていましたね(笑)。姉として育つにつれ、妹への気遣いや機転が利く対応ができるようになりました。最近新学期を迎えたばかりの妹は、新しい環境でのストレスが多いようで、ちょっとしたことで泣いたり怒ったり不安定なんです。今朝もトラブルがあったのですが、姉のとっさの対応で見事になだめた。よく気持ちが分かっているな、優しいなと感じることが多くなりました。私自身は三姉妹の一番下なので、お姉ちゃんてすごいなと感心しています。

思い出と家族をつなぐアルバム

ー写真を介して、成長を実感しますね。今回フォトアルバムを作成するにあたって、何を軸にまとめました?

大きく2つあります。一つ目は、母親による家族の記録。私の視点から、娘と父との触れ合いや関係性をまとめました。写真のなかに私が写っていなくても、レンズの後ろにいる母親の存在を感じられるようにしています。二つ目は、贈り物としての視点。ちょうどアルバム作成中に、北海道に住む義理の母が大病を患い、しばらく入院することに。この先どうなるかわからなかったので、どうしても1冊送りたかった。遠く離れた東京で、孫と息子がどうやって暮らしているのか。それを伝える手段としてのアルバムです。手元にあることで存在を身近に感じることができるし、好きな時に何度も見返すこともできる。想いをつなぐ媒体ですよね。

img-Kaori Mochida

ー写真をカタチにする良さが一番活かされますね。 お義母さんからは、どのような反応が?

それまで携帯宛に写真データを送ることはあったけれど、アルバムのようにまとまったカタチで送るのは初めてでした。「本当に嬉しかった」と、連絡が来ましたね。どちらかといえば寡黙な人で、感情を表に出す方ではないけれど、写真が生きる力を与えたと実感しました。息子が幸せな家庭を築いているということを感じてもらえたようです。ありがたいですね。

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ーアルバムを作るなかで、面白かった部分はどこですか?

私が幼い頃はフィルムだったので、記念写真のようにどこか構えている姿の写真が多くて。むしろ今は、写真をいつでも気軽に撮れるから、被写体が自然体ですよね。写真という断片がアルバムにまとまることで、リアルな生活感が浮かび上がってくることも新鮮でした。写真をセレクトする時も、家族との会話が増えて、おぼろげだった記憶が更新されている感覚がありました。夫と写真を見ながら、改めて子供の成長の早さを感じましたね。こうしてまとめておかないと、あっという間に時が過ぎてしまう。振り返る機会の大切さを知りました。

二俣公一 イメージ

ーさて、娘さんへも質問。実々子ちゃん、幼い頃の写真を見て、発見したことはなんですか?

外遊びが好きなので、いつも物足りないと思うけれど、アルバムには外で遊んでいる写真がたくさん並んでいました。それだけ両親が色んな場所に連れていってくれて、私が好きなことに付き合ってくれていることに気がつきました。忘れかけていた思い出も蘇って、お父さんやお母さんとの会話が盛り上がりました。

ー家族団欒のきっかけになりましたね。藤吉さんが工夫したところを教えてください。みなさんへアドバイスするとしたら?

なにより写真がたくさんあるので、セレクトをどうするかが大事です。一番伝えたいことを物語っている1枚を軸にして、それに合った写真を選んでいく。あとは潔く捨てる。レイアウトでは、人物だけで埋めないことも意識しましたね。四季が写り込んだ風景や、娘が作った工作のブツ撮りなども加えることで、色んな角度から時間の経過を感じることができるアルバムになったと思います。写真を溜めっぱなしだと腰が重いので、目標設定することも大切ですね。例えば、子供の入学前や、次の子が生まれる前に作り終えるとか。データはこまめに保存できるので、忙しくても少しずつでも前進することが大事ですよ。

Profile

Prof-kazumi-hirai

藤吉陽子(ふじよし・ようこ)

シンプルなお菓子の企画・製造・販売を手がける「O-kitchen」主宰。著書に『ないしょの夜おやつ 今日も一日、おつかれさまでした。』(ナツメ社)。

 

http://www.o-kitchen.net/