磯沙緒里 メイン

ヨガインストラクターとして活躍する磯さんが、引っ越しのタイミングで断捨離を決意。これまで捨てることができなかった思い出の品々を撮影し、1冊のアルバムを完成させました。過去20年間の記録をまとめるなかで、見えてきたものとは

 取材・文:BAGN Inc 撮影:藤堂正寛 

モノに込められた想いと向き合う

ーお引っ越し前に整理してみて、どのようなものが残りましたか?

幼い頃からコレクションしていたスノードームや、学生時代に熱中した写真の作品集。仕事で資格を取るために必死に書き写したノートや、新婚旅行で買った海外の土産物も。特に捨てづらかったのは、息子に関するものたち。妊娠・出産祝いで頂いたものや、着れなくなった洋服、おもちゃなどです。

 

磯沙緒里

なにか気づきはありましたか?

断捨離にあたって、兎に角ものを減らそうという意識が先に働いて、あまり深く考えずに判断していました。改めて整理したものを見ると、学生時代から就職・独立、結婚、出産という人生の区切りを通じて、何度もふるいに掛けられてもなお残っているんですね。状態は悪くなる一方なのに、どうして捨てられないんだろうという理由を客観的に考える機会になりました。

磯沙緒里Large

捨てられない理由は、なんだったのでしょうか?

そこに込められた「想い」の強さ、ですね。ものによっては数百円の価値かもしれませんが、色々な記憶を鮮やかにフラッシュバックしてくれる。友人や家族の顔や、その時の状況が浮かんできて、もはや自分だけの持ち物じゃないような気さえする。亡き母や被爆者らの遺品の写真作品で知られる、石内都さんが大好きなのですが、今回のアルバム作りでその理由が初めてわかったというか。撮りながら、想いが込められたものの深みを再認識しました。

過去と現在の交わりから物語が生まれる

ーアルバムは、どのようにまとめましたか?

ブツ撮り写真と関連する写真を見開きにレイアウトしながら、時系列で作りました。私だけの記録、夫との記録、そして子供との記録という風に、20年間を遡るドキュメンタリーです。写真の組み合わせによって過去と現在が交わって、そこからストーリーが生まれる面白さがありますね。家族写真だけでつくる普通のアルバムにはない、編集の妙を楽しみながらまとめました。

img-Kaori Mochida

ー特に思い出深いものはありますか?

ドライフラワーですね。もともとは、私の妊娠祝いにと、友人がサプライズで贈ってくれた花束です。「大好きな花屋で、お気に入りのスタッフに作ってもらったから」と準備してくれたのでした。しばらくして、友人は息子が生まれる頃に亡くなってしまうのですが...。ドライフラワーにしてずっと飾っていましたが、時間とともに朽ちて脆くなってしまいました。いつまでも保存ができないのなら、なおさら写真として残す価値がある。そして、その横にレイアウトしたのは、生まれて間もない息子の写真。もう会えなくなったけれど、花束をもらった時の感情は、私のなかにいつまでも残っています。

磯沙緒里Large

ーモノを起点にしたユニークなアルバム、手にしてのご感想をお聞かせください。

変わりゆくものをカタチとして残せることが写真の良さですが、変わらないものを残す良さにも気がつきました。例えば、ヨガマットの写真。息子が生まれる前から、私だけが使っていたものが、いつの間にかヨガの時に息子が用意してくれるようになって。自分もマットの上に乗りたいらしくて、気がつけば二人の道具になっていたんですね。マットそのものは変わりませんが、息子の成長とともに共通の思い出のものへと変わっていく。その過程がとても嬉しくなりました。いまや息子が遊ばなくなったミニカーや積み木の写真にも、ひとつひとつに背景や思い出があって。彼が成長して見返した時に、会話のきっかけになると思います。

二俣公一 イメージ

ーご家族とシェアしてみて、どんな反応がありましたか?

昨日もアルバムを眺めながら話をしたのですが、夫と行った旅行先の写真を見ながら、昔話で盛り上がりました。同じ時間を一緒に過ごしたけれど、それぞれ違う風景を記憶していることが面白くて。気づきもたくさんあるんです。互いの思い出を共有することで、異なる視点の記憶で過去をアップデートできる。アルバムならではの楽しみですよね。

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ー磯さんにとって、どんなアルバムになりましたか?

この1冊に20年もの時間や記憶、感情が詰まっていて、まさに「宝物」になりました。ものを整理して、写真に収めて、アルバムにまとめる。なかなかやらない作業だからこそ、私にとって価値あるものになったと思います。私や家族だけの記録ではなくて、周りの友人や支えてくれる人とのつながりや気遣い、想いがカタチになった。断捨離から始まったアルバムづくりでしたが、すごく良い機会になりました。

img-Ryo Takahashi

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Profile

Prof-kazumi-hirai

磯沙緒里(いそ さおり)

幼少期よりバレエやマラソンに親しみ、体を使うことに関心を寄せる。学生時代にヨガに出合い、会社員生活のかたわら、国内外でヨガを学んだ後、インストラクターに。スタイルに捉われない、多様な内容・シチュエーションでのレッスンを行う。ヨガイベント出演、雑誌やウェブでのヨガコンテンツ監修やコラム執筆のほか、ヨガイベントプロデュースも多数手がけ、活動は多岐に渡る

 

http://saoriiso.com/